17栄養 植物にとってのホウ素

近年では、世界的な人口増加や優良農地の減少、気候変動問題の影響も相まってなのか、植物に関連した元素の研究が飛躍的に進んでいます。

今回は植物に必要な17種類の栄養素からホウ素について少しだけ深堀してみます。


【ホウ素(B)とは】

窒素、リン、カリウムなどの多量必須元素と異なり、定期的に施肥する必要性が低い、微量必須元素のひとつです。
第13族中、唯一ホウ素のみが半金属(メタロイド)に属する。

肥料ナビによると、”微量要素の中では比較的欠乏しやすい成分です。”と説明されています。
1920年代に必須元素として報告*1されてから長い間、植物内における分子機構は不明でした。

平成30年の日本農学進歩賞受賞者*2によるホウ素の研究結果によると、”ホウ素の生理機能は植物細胞壁ペクチン質多糖ラムノガラクツロナン II のエステル架橋であり、ペクチンのネットワーク形成による細胞強度維持や細胞接着に寄与する 2)。”解説があり、植物の成長に欠かせない細胞壁の構造に影響する大切な栄養素だと解釈できます。

また、”ホウ素が植物に必須であることを説明した初めて論文では”ソラマメ(Vicia faba)をホウ素の含まない培地で育てると,根の伸長が抑制され葉も小さく濃い緑色になるが,その植物にホウ素を与えることのみによって,それらの形質はみられなくなり,成長が回復することを発見した。”*4として紹介されている。
ニッケルやモリブデンなどを例にする微量必須元素と同様に、移動しやすく定着しにくい性質があります。
積極的な施肥が一般的ではない反面、降水や土壌の性質等の影響から欠乏障害の報告が”日本を含めて東南アジアなど世界80か国以上で100以上の植物種で報告”*2されているそうです。


【欠乏すると】

葉色では白っぽく、もしくは黄色っぽくなる、形状では葉先が萎れる、奇形が出たり、成長点が止まったりとお決まりのパターンが疑われる。
また、リンゴなどの果実はホウ素とカルシウムのバランスが影響する蜜病と呼ばれる病があり、リンゴ銘柄「ぐんま名月」はホウ素過剰に敏感な品種として、果実内部の影響を紹介する資料*3があり、対策として「一切のホウ素肥料の施用・散布は避ける。」
として徹底しているそうです。



一方で外観から判断できない欠乏症状もあり、”日本では、ハクサイ、ダイコンなどアブラナ科などの作物でホウ素欠乏症が報告されている。実際は、外観には欠乏症状が現れない潜在的なホウ素欠乏による収量低下の被害も存在すると考えられている。”*2

また、同研究*2によると、”ホウ素は至適濃度範囲が比較的狭く、植物種や品種間で至適濃度範囲が異なるため厳密な施用管理が必要であることや、発展途上国では継続的な施肥が現実的でないことからも、ホウ素欠乏耐性作物品種の開発が望まれてきた。一方、高濃度のホウ素は生物一般に毒性を示し、日本では環境基準が 1 mg / L と設定されている。過剰のホウ素は根の伸長抑制や葉縁部の枯死を引き起こし、成長量を著しく低下させる。”としてホウ素欠乏と過剰に耐性ある品種開発の重要性が解説されています。

研究結果から見る、ホウ素耐性が強化されたシロイヌナズナの比較*2


【対策】

・ホウ素欠乏にはホウ素を補給する!
アミノール科学研究所 エバホウソAエキス500ml


・ホウ素過多

アルカリ性に偏った土壌では不溶性になる特性を活かして、土壌をphに寄せる資材を使って流す。
苦土石灰1.6kg→朝日アグリア朝日工業ハイパワー苦土石灰
有機石灰5.0kg→サンアンドホープカキガラ有機石灰
17種類の必須栄養素から「ホウ素」についてのご紹介でした。


*1細胞壁ペクチンのホウ酸架橋率は植物のホウ素欠乏の有用な診断指標となる―作物のホウ素欠乏を迅速・的確に診断する技術
*2ホウ素輸送体の機能分化とホウ素欠乏と過剰耐性植物の作出の研究
*3りんご研究所 栽培部
*4植物におけるホウ酸輸送の分子機構と制御

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