17栄養 植物にとってのニッケル
17種類の栄養素からニッケルについてご紹介します。
はじめに
植物の成長や発育には、さまざまな栄養素が必要です。これらの栄養素は微量元素と大量元素に分類され、微量元素は少量しか必要としないものですが、その存在が植物の健康と発達に極めて重要です。その中で、ニッケル(Ni)も微量元素の一つであり、植物にとって重要な役割を果たしています。
ニッケルの役割
①植物内尿素の正常な代謝に必要
ニッケルは、ウレアーゼと呼ばれる酵素の活性化に関与しています。
ウレアーゼは尿素をアンモニアに分解する酵素であり、この反応は植物にとって重要な窒素源となります。
ニッケルの不足があると、ウレアーゼの活性が低下し、窒素の利用が制限される可能性があります。
②育成発達
ニッケルは植物の成長や発育にも関与しています。
特に種子の発芽や葉の形成、花の形成などにおいて、ニッケルは必要不可欠な栄養素です。
ニッケル欠乏の場合、これらのプロセスが適切に進行しなくなり、植物の発育が阻害される可能性があります。
ニッケル過剰の影響
植物は通常、土壌から根を介して栄養素を吸収します。
ニッケルも例外ではなく、植物は土壌中のニッケルを取り込んで利用しますが、過剰の早期や初期段階では明確な症状の判断が難しく、葉が萎縮したり、なんらかの育成不良
が出始めた頃にようやく気が付くかもしれません。
また、他の栄養素と同様に、過剰状態では枯れてしまう恐れがある一方で、ニッケルを蓄える植物があり、”ニッケルのハイパーアキュムレーターは、細胞壁内の金属を結合させたり、細胞内の貯蔵器官である液胞に貯蔵したりすることで、この過剰に耐える能力を進化させてきたとTjoa氏は言います。彼らは主に新芽、葉、根、または樹液にニッケルを蓄えます。”*1と紹介され、ニッケル含有量が非常に多い影響による緑色の樹液と共に、ニッケルが採掘できる希少な植物として紹介されています。
ニッケル過剰への対策
ニッケルを含む重金属濃度の高い土壌は日本各地に存在し、一般的な鉢物や人工的に土を耕す場合にはあまり関係がないかもしれませんが、対策の一例として”ニコチアナミンという金属のキレーターの合成を強化することでニッケル過剰に強くすることができるのです。植物分子生理学研究室では変異体の作成や遺伝子導入によってニッケル過剰に強い植物の作出を行います。”*2として、遺伝子導入の観点から実験を進める研究者もいるようです。
まとめ
”ニッケルは微量元素でありながら、植物の生育や代謝において重要な役割を果たしています。特にウレアーゼの活性化やストレスへの対応においてその重要性が顕著であり、植物の健康な成長には適切なニッケルの供給が必要です。したがって、栽培や農業の際には土壌中のニッケル濃度にも注意を払い、適切な栄養状態を維持することが求められます。”*3
ニッケルの栄養素を日常的な栽培環境で具体的に「何を」「どうすれば良いのか」と言った文献を見つけることができず、課題として苦戦している方も見つけることができませんでしたので、今回はここまでとします。
17種類の栄養素からニッケルについてのご紹介でした。
#必須栄養素 #ニッケル #ニッケルを生み出す木 #緑色の樹液を出す木
*1BBC-The rare plants that ‘bleed’ nickel
*2植物分子生理学研究室-ニッケル過剰に強い植物を作る
*3ChatGPT3.5