17栄養 植物にとってのモリブデン

17種類の栄養素からレアメタルでもあるモリブデンについてご紹介します。

・役割
根粒菌の窒素固定、硝酸を還元し、タンパク質やビタミン類の生成に役立つ微量元素(栄養素)です。
また、豆類(ダイズ)については下記の通り、収量についての研究結果がある
モリブデン(Mo)は豆類の根粒窒素固定に必須の元素である.ダイズは生育初期に必要な Mo を種子に依存しており,生育初期から根粒を多量に着生する根粒超着生ダイズは普通の根粒着生を行う品種に比べ多くの Mo が必要と考えられる.これまで行われた超着生ダイズの圃場研究では種子のMo含量は考慮されなかった.そこで本研究では,種子の Mo 含量富化が超着生ダイズの生育と収量に及ぼす影響を検討した.Mo 含量富化種子は,前世代の R5 (子実肥大始期)にモリブデン酸ナトリウムの 0 . 3 g L-1 水溶液を散布量 100 mL m-2 で 2 度 , 葉面散布して生産した.エンレイとその超着生変異体En6500と改良された超着生系統のEn-b0-1と関東100号についてMo含量富化種子(5.5–15 . 1 mg kg-1)と対照種子(0.3–2 . 2 mg kg-1)に由来する植物体の根粒着生,窒素固定,収量を比較した.超着生系統ではMo 富化種子由来の植物体は対照種子由来のものに比べ個体当たりの根粒着生量は少ないが,根粒の Mo 含量が高く,茎乾物のウレイド含量も高かった.Mo 富化種子由来の植物体の収量は対照の 1.3 から 2 倍であった.エンレイではMo 富化種子と対照種子に由来する植物体の間に根粒着生量の差はなかったが,前者の収量は後者より 10%まさった.
種子 Mo 富化は超着生ダイズの超着生を部分的に抑制し,生育,収量を大幅に改善すると考えられた.*1

・欠乏症
下葉等の弱い葉から順に黄色化、葉っぱに張りや艶がなくなったり、湾曲が生じる。

マンガンや亜鉛などの微量元素(栄養素)と同様に、移動しやすく定着しにくい性質があります。

土壌内のphによる影響を受けやすく、酸性状態で低下しやすい。

・欠乏症への対策*2
欠乏症が発生した場合には、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸アンモニウムの0.01~0.03%液を葉面散布する。土壌に施用するときは、10a当たり、モリブデン酸ナトリウムまたはモリブデン酸アンモニウム30~100gを100Lくらいの水に溶かしてうね間に施用し、覆土すればよい。土壌中の全モリブデン含量は0.5~3.0ppmで、そのうち、可給態のモリブデンは10分の1程度である。他の微量要素と異なり、モリブデンは土壌が酸性化すると、農作物に利用可能な可給態の量が減少する。土壌の反応に留意し、石灰で酸性を改良しておかなければならない。さらに、土壌を健全に保つためには、十分な量の堆肥を施用し、有機物からのモリブデンの供給と土壌の理化学性の改善を図ることが必要である。

上記の内容からも水田等の湿地系の土壌では特に酸性に傾きやすい場合には注意が必要な栄養素です。

17種類の栄養素からモリブデンについてのご紹介でした。

#必須栄養素 #モリブデン #レアメタル #希少金属

*1日作紀(Jpn. J. Crop Sci.)85(2):130―137(2016)
*2微量要素欠乏対策-農林水産省