盆栽貿易の1歩 線虫検査xベルマン法
日本が世界に誇る芸術文化「BONSAI」
盆栽にまつわる情報共有を通じて、盆栽界のさらなる発展を応援いたします。
今回のテーマは「線虫xベルマン法」です。
【結論】
①令和5年から民間企業も線虫検査が可能に
②良くも悪くも地球上の8割が線虫説、発見されて当然なので対策を
【線虫とは】
植物に関係する線虫は主に土壌内に生息し、植物に寄生することで”育成に悪影響”を及ぼすことがある存在です。
単なる育成不良に止まらず、根腐れ病、萎凋病、つる割れ病など多くの”病”リスクになります。
また、白っぽい見た目で1mm前後のサイズなので、日常管理で発見することは非常に困難ですが、
”松林が壊滅”
Bursaphelenchus 属センチュウ:マツ枯れの病原体が原因で”マツ林一体を壊滅”した事例があります。
”アカマツやクロマツのような木本の植物が線虫によって枯死する例は唯一の例外、ココヤシの red ring disease 以外、知られていなかった。1969 年にマツノザイセンチュウが発見されても、これが西日
本一帯のマツ林を壊滅状態にしているマツ枯れの病原体だとは発見者自身考えなかった。綿密な接種試験の結果、1970 年にようやく、この線虫の病原性が明らかになり、1972 年にはその媒介昆虫が解明されて、マツ枯れの感染の仕組みが明らかにされ、その仕組みに応じた防除対策が講じられた。”*1
栽培環境が悪いことも、線虫を誘因することに繋がるかもしれませんが、学名”Nematoda”、英名”Roundworm”等と植物に関係する線虫だけでなく、線虫系を全体で見ると”現在、15,000種ほどの線虫が知られていますが、これは地球上に存在する動物種の八割を線虫が占めていることを意味します。また、線虫たちは住んでいる環境に対して大切な役割を持っています。”*1と解説され、線虫の繁栄レベルが伺えます。
ある意味で人類より繁栄している説のひとつに、”強烈な多様性”があります。
例えば線虫に男女は基本的にない、つまり両性生殖です。(ジェンダーレス)
他にも、成長過程で性別が変わる種類や相手がいなくても、単体で増殖が可能な単為生殖と呼ばれる種類も存在します。
盆栽輸出に関係する線虫は1mm前後ですが、東京都にある寄生虫専門博物館”目黒寄生虫館”に展示されている最大種は8.8mです。*2 ※1メートルずつ折り曲げられている。
【線虫検査とは】
盆栽輸出を成功させる為のカギとなる、土壌内(培養資材)の線虫を確認する検査です。
特定の線虫が発見された場合は”輸出不可”になりうるだけでなく、そもそも植物の生命線である”根”に強く影響する検査項目なので、盆栽輸出を成功させるカギと表現しました。
例えば、EU・英国に向けた検査では”特定の線虫(アメリカオオハリセンチュウグループ)が発見された場合は、栽培地検査不適合となり、本年度の輸出はできません。”*1
アメリカ向けの検査では”培養資材を採取してジャガイモシストセンチュウ及びジャガイモシロシストセンチュウ”*1と具体的に検査対象の線虫が指定されています。
また、台湾やシンガポール向けの検査では、”植物寄生性線虫が発見された場合”に検査不合格とし、検査対象の線虫を広く指定しています。
【線虫検査不合格の場合】
上記のEU・英国向け検査を例に特定の線虫が発見された場合に当該年度は輸出ができなくなりますが、
再度、”消毒を実施”した上で再申請が可能な場合があります。
例えば、EU・英国向けの線虫検査でも”アメリカオオハリセンチュウグループ”以外であれば、2回まで線虫検査を受検することができます。
【ベルマン法とは】
がーぜ等に土壌を入れ、水に浸して線虫が紙を通り抜ける性質を利用して”土壌と線虫を分離”させる手法です。
採取した土壌サンプルから線虫を分離し、線虫種別の確認や密度推定を行う。
薬剤を利用せずに検査を行える為、植物に対する薬害は心配する必要がありません。
*4
また、令和5年の法改正により、これまで植物防疫所が一手に行っていた”線虫検査”ですが、
民間企業も盆栽輸出を前提にした”線虫検査”を行うことができるようになりました。
例えば「株式会社環境管理センター」では、輸出検査に求められる”ベルマン法”に加え、”メタゲノム法”や”ふるい分け法”など様々な手法によって線虫検査診断に対応しています。
また、ベルマン法はご自宅でも検査できます。
ベルマン法線虫抽出キット (株式会社イガデン)
ベルマン法線虫抽出キット (ヤフーショッピング いいもん屋)
現状では”ベルマン法”が一般的な検査手法かつ、世界的には一部の国が要件として設定していますが、今後は盆栽輸出の増加に伴って、多くの国が具体的な線虫検査方法を要件にすることや、検疫措置の強化が想定されます。
【所感】
”絶対に輸出を成功させたい”強い意志をお持ちの方にとって、ベルマン法では分離効率が悪い線虫対策の為、”ベルマン法”以外の検査方法に対応した民間企業は力強い味方になってくれると思います。
今回は線虫検査の厳格化を見据えた、線虫xベルマン法の観点から記事を執筆しました。
引き続き、盆栽業界の活性化に繋がる内容をご紹介いたします。
今回の紹介活動により累計127記事目、創作時間は約172時間
*1私たちの知らない線虫の世界 京都大学 名誉教授 二井 一禎
*2澤研究室-線虫に関する研究
*3目黒寄生虫館-Wikipedia
*4www.jppn.ne.jp