盆栽貿易の1歩 栽培地検査
日本が世界に誇る芸術文化「BONSAI」
盆栽にまつわる情報共有を通じて、盆栽界のさらなる発展を応援いたします。
今回のテーマは「栽培地検査」です。
【結論】
①栽培地検査を求める国は195ヶ国中、約1%以下
②栽培地検査を求める国の増加を見越して、2つの公的書類取得を目指す
【栽培地検査とは】
盆栽の輸出を成功させる為には、大前提として相手国の求める条件を満たす必要があります。
国によっては日本国内で行う「栽培地検査」が要件にあり、ハードルのひとつになります。
日本の植物防疫所たる公的機関が病害虫がないことを輸出先国に応じて1~2年間に渡る審査等により客観的に証明する制度です。
また、栽培地検査を求める国は多くありませんが、制度の浸透や厳格化の流れによって増加する可能性があります。※令和6年2月現在、世界195ヶ国中片手で数える程度
日本の植物防疫所から発給される公的書類は2点あります。
・「栽培地検査適合報告書」
・「植物検査合格証明書」
手続自体の難易度より注目したいのは下記3点
①申請から発給まで約「1年間」
②申請から発給後も約「2年間」お役所手続が続く
③手続は原則電子申請のeMAFFを使用
【お役所手続】国内編
・栽培地検査申請書
この申請書を植物防疫所へ電子申請することから始まります。
盆栽の場合は、提出期限が3月31日まで(令和6年2月時点)
無事に提出が完了した後は、現場の検査が開始されます。
植物防疫所の資料*2によると約1年間の間に2回~6回の栽培地検査が実施されます。
この審査を通過させることで「栽培地検査適合報告書」が発給されます。
・栽培施設明細(ほ場登録)
輸出先国に応じた、栽培施設の諸条件を記載します。
重要な項目が羅列されますが、具体的な申請書様式は見当たりません。
また、令和5年に植物防疫所の担当者へ確認し、音声データを確認すると審査項目はなく、
栽培地検査が通過した後に登録申請を行うことは可能で、アパートのベランダでも可能であるとの回答でした。(K)
申請書サンプル*2
早くても栽培地検査申請書を提出してからこの申請書を提出まで1年間の時間が必要で、
EU諸国向けの場合は2年間ほど必要になります。
具体的な積載船や荷受人など、渡航に関する情報を記載する。
また、税関と植物防疫所の共通様式もある→共通様式(ハ)
この審査を通過させることで「植物検査合格証明書」が発給される。
その他、輸出先国の求める条件に応じた申請書
・消毒検査申請書
・精密検査申請書
・目視検査申請書
・目視検査申請書(再輸出)
つまり、最初の申請から植物検査合格証明書が発給されるまでの間、
定期的にお役所担当者と折衝し、各種の法令を解釈した上で手続を遂行する必要性があります。
【所感】
お役所は民間の「お店」ではない、基本的にこちらから聞かないと答えてはくれない。
サービス業ではない為、重要な局面で突然手続を進められなくなることは十分に可能性があり、
申請者側が「知らなかった」や「教えてくれない」や「言われた通りにした」などは通用しない世界です。
例えば、植物防疫所のサイトでは「A4サイズへ印刷した後に提出」とする案内がありますが、
法令では電子申請が原則となっています。*1
日本が世界に誇る芸術文化の担い手が自ら行うのは勿体ないのが「お役所手続」です。
簡単な手続の割りに多くの時間や労力が必要、無駄な法令リスクは当店が請け負います。
今回は盆栽貿易の1歩、栽培地検査の観点から記事を執筆しました。
引き続き「盆栽貿易」に関する情報をご紹介いたします。
*1輸出検査実施要領 令和5年2月20日 4消安第5904号
*2盆栽等の輸出検疫に係る説明会-令和3年2月-植物防疫所