植物と緑色 芸術家とアブサン

世界に誇る盆栽と盆栽園の芸術家に関する緑色の歴史から「アブサン」と言う面白い逸話をクロロフィルの調査過程で見つけましたので共有します。

はじめに

クロロフィルとは

植物は通常緑色に見えます。これは、クロロフィルが豊富に含まれることが要因で、クロロフィルが緑色の光を吸収せずに反射するためです。人間や動物などの他の生物は、光合成を行わないため、通常はクロロフィルを含まない細胞が主体です。

クロロフィルは、植物や一部の藻類に見られる緑色の色素で、主に葉緑体と呼ばれる細胞小器官内に存在します。クロロフィルには、主にクロロフィルaとクロロフィルbという2つの主要な種類があります。

これらのクロロフィルは太陽光を捉えて光エネルギーを化学エネルギーに変換し、共通して青~赤系の波長の光を吸収し、それぞれ微妙に異なる波長の光を吸収して光合成反応を可能にします。

光合成は、太陽光を利用して二酸化炭素と水から酸素とブドウ糖を生成する反応です。このプロセスにおいて、クロロフィルは光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを用いて二酸化炭素と水をブドウ糖に変換します。この反応により、酸素が放出され、植物がエネルギー源として利用できる有機物が生産されます。

近年注目される植物工場では植物育成用の専用ライトが使用され、当サイトでも定期的に植物用ライトや光合成について紹介する記事の中で、植物が吸収する光(波長)や単位について解説しています。※1/15記事 ※12/20記事など

クロロフィルは単なる光合成の役割だけでなく、植物の成長や発芽にも重要な影響を与えます。また、クロロフィルは植物の健康状態を示す指標としても利用されます。葉が健康であれば、クロロフィルの存在により緑色が維持されますが、病気や栄養不足の場合は褐色化や黄色化、白っぽくなったりしてしまいます。

クロロフィルの発見

1906年にクロロフィルがクロマトグラフィーで分離できることが発見され、その色(希:chroma)がクロマトグラフィーの語源となりました。*1

しかし、クロロフィルの発見前にニガヨモギに含まれるクロロフィルに由来した

「アブサン」によって様々な議論へ発展した経緯があるそうです。

アブサンとは

ゴッホやピカソが愛飲し、太宰治や芥川龍之介など多くの芸術家や偉人の作中に登場する薬草酒です。
ヨーロッパに自生するニガヨモギを主成分とし、19世紀のスイスで医療薬として製造された後、薬草酒として商品化され、世界中に広まりました。

主成分はアニスやフェンネル、ワームウッド(アブサンス)などの植物から抽出されるハーブで、アブサンは独特な緑色をしており、水で薄めると白濁する性質があります。

”フランスでは、1840年代アルジェリア紛争の時に兵士に対して熱病予防薬としてアブサンを携行させ、帰国した男たちがアブサンを愛飲するようになった。”*2

また、スイスでピエール医者が蒸留器を利用した独自の薬を製造、処方など医学的な観点から発祥し、その後にペルノ酒造会社が買取、商品化する歴史があります。

独自のスプーンと角砂糖を利用した飲み方があり、ヨーロッパでは文化的な側面があり、アルコール度数は脅威の70度前後です。

当時は名立たる芸術家が愛飲し、潜在する才能を開花させたとする説がある一方、ニガヨモギには中枢神経に作用するツヨン(Thujone)という成分が、強い神経毒性や昏睡など麻薬的な効果があり、20世紀初頭には世界的に製造、販売が禁止されていました。

これは「緑の妖精」とも呼ばれ、クリエイティブなインスピレーションを得るために摂取されることがあり、芸術家たちに潜在する独自の芸術性や感性が引き出されるきっかけになったとされ、アブサンを題材にした作品がいくつも残されています。

*フィンセント・ファン・ゴッホ 「アブサンのあるカフェテーブル」

*ヴィクトル・オリヴァ「アブサンを飲む男」

・太宰治「人間失格」より抜粋

”永遠に償い難いような喪失感を、飲み残した一杯のアブサンと比喩した~”

・芥川龍之介「河童」より抜粋

”~アブサントを六十本飲んで見せました。” 

※アブサンはアブサントと呼ばれることもあります。

その後、1981年にWHOによるツヨンの残存量を0.5μg/gであれば承認するとして製造、販売が復活しました。

また、”ドイツの学術雑誌に掲載された論文に、アブサンを古典的な処方箋で製造してみた場合のツヨンの量が記載されていました。それによるとツヨンの量は61〜101μg/gで、WHOによる許容量の100倍以上ありました。”*3とされる記事があるなど、当時敵視されていた一面があるアブサンですが、麻薬的な効果があったかは疑問視されているようです。

例えばアブサンが責任を押し付けられた、あるいは目の敵にされた背景について資料から引用すると、”その後の実験の結果、いわゆるアブサンの有害性なるものには、ほとんど根拠がないことが明らかになった。~中略~

麻薬を摂取するときのような独特の作法、労働者階級や反体制的な層に愛好家が多かったこと、怪しげな緑色・・・・・・。そう、アブサンはスケープ ゴートとしてちょうどよかったのだ。”*5とされ、アブサンが人気になる反面、ワインの売れ行きを危惧した政府がプロパガンダに利用したとする説もある中で見事に復活を遂げた歴史があります。

最後に

植物界では健康状態のパラメーターとなる「緑色」

光合成に深く関与し、クロロフィルの名称については黒歴史真っ盛りの「アブサン」と呼ばれる植物が関係していました。

”クロロフィルは植物界における生命の源であり、光合成を通じて私たちの生態系においても重要な役割を果たしています。その美しい緑色は、植物が太陽光を受け取り、地球上の生態系を支えるための鍵となっています。クロロフィルの理解は、私たちが自然と調和していく上で不可欠な知識の一部です。”*6

偉人的な芸術家を魅了させ、才能を開花させたきっかけとも言われる一方で時代背景も相まって根拠に疑念がある中で敵視され、発売禁止に至る程に黒歴史があるアブサン。

100年程の歴史を経て見事に復活を遂げ、2022年4月には日本でアブサンに特化したアブサンバーを中目黒にオープンさせる為のクラウドファンディング*4へ200万円以上の金額が集まり盛上りを見せるなど、見事な復活、活躍ぶりを見せていますが黒歴史を経ることで魅力に深みが増したのではないでしょうか。

天才、スティーブジョブスもヒッピー時代(黒歴史?)を過ごし、スタンフォード大学卒業式の祝辞では「Stay hungry. Stay foolish.」※ハングリーであれ、愚か者であれと繰り返し述べていることは有名ですが、現代のコスパやタイパに見る効率化や合理的な行動が評価される風潮と一見真逆な思想を大切にしていることが伺えます。

また、「銘」のある芸術家ゴッホも生涯で売れた絵は1枚だけだったという説があります。

いつ、どんなタイミングで評価されたり、価値ある品へ昇華するか難しいのが芸術の世界だと感じます。

日本が世界に誇る芸術「BONSAI」については、現代でもとてつもないレベルの「銘」ある作品が続々と登場し、盆栽を扱う盆栽園の芸術家の方々による高い技術や感性には驚くばかりですが、数百年単位で見ると発展の可能性は無限大だと思います。

独特な香りと色彩、紆余曲折の時代背景があるアブサンは、「植物」と「芸術」をかけ合わせた日本の芸術文化「盆栽」と親和性を感じました。

盆栽界の発展に寄与する為に活動し、盆栽界のさらなる発展を応援しております。
盆栽に関係する方々と「アブサン」で祝杯できることを一つの目標に、2024年も誠心誠意を持って尽力し、
法律事務を少しでもFUNNY(面白い)な形で提供できる存在を目指します。

本年も当サイトへアクセスして頂きありがとうございました。
想定に反して多くの方にアクセスして頂いた様子です。
来年はお客様の為に頑張ってみたいと思います。

2024年は1月8日10時より通常営業を開始いたします。

*1研究ネット-光合成色素とは

*2ABSSINTHE: History in a Bottle,2000-Barnaby ConradⅢ著  浜本隆三訳

*3養命酒-禁断の酒「アブサン」とニガヨモギ

*4ゴッホを始め芸術家を夢中にさせてきた「緑の妖精」薬草酒アブサンのバーを、中目黒にオープンしたい!

*5色の秘めたる歴史 75色の物語

*6ChatGPT3.5